2001年秋から2002年春闘にむけた闘争の経過と教訓

1.闘争方針で掲げた統一要求と課題


 自交総連は9月5、6日にひらいた第5回中央執行委員会で、「2001年秋から2002年春闘にむけた闘争方針」を次のように決めた。

(1) 職場活動の活性化、「闘い学ぶ」を大切にして

●「働くルールの確立」を前面に掲げ、これ以上の状態悪化に歯止めを
1.底上げと最低賃金法違反の是正を始め労働基準法や改善基準告示違反の点検・摘発闘争の強化
2.重点争議(第一交通、交運グループ、勝英関係)への対策強化と支援・激励行動、 100円玉カンパの呼びかけ

●『将来像』を見据えた政策要求の実現を重視し、とりくみ推進を
1.「運用基準」策定に対応するとりくみの強化、要求の反映
2.「政策学習強化月間」(10月1日〜11月30日)の設定
3.自教共同センター第7回全国交流集会(12月9、10日)への参加

●倒産・大量失業攻撃に反対し、労働者・国民本位の経済再生を
1.「働くルールの確立」及び「介護タクシーの保険適用を求める要請」署名の目標達成(6万筆)
2.10・23国民大集会(於明治公園)への参加、小泉「構造改革」の断行など悪政阻止の闘い

(2) 組織の強化拡大をすべての職場、地連(本)で

1.秋の組織拡大月間(10月15日〜12月15日)の設定
2.すべての職場、地連(本)で組織実勢の1割増を掲げて
3.全労連第3回全国討論集会(11月8〜10日石川・山中町文化会館)への参加

(3) ひとつひとつのとりくみの成功と春闘準備の体制確立を

●職場要求実現の闘い
1.退職金、定年延長、労災見舞金、年末一時金、その他春闘未解決事項の解決
2.要求提出=10月20日、回答指定=10月31日、11月中決着をめざして

●10・24全国いっせい行動の実施と訪問活動
1.10・24全国いっせい行動の実施、中央では交運共闘の連鎖的な請願行動を軸に「怒りの霞ヶ関中央行動」に合流、独自行動の配置(関係省庁交渉、各政党への申入れ)
2.未加盟組合への訪問活動のとりくみ展開(「タクシードライバー法案」提言に関する説明、意見交換)

●2002年春闘の準備
1.2002年春闘方針(案)の策定、早めの体制強化
2.『働くみんなの要求アンケート』の作成、調査の実施

●闘いの具体的展開と日程
 (略)


2.具体的な闘いの経過と主な結果


(1) 統一行動、省庁交渉などのとりくみ結果

1.10・24全国いっせい行動の実施
 「くらしと雇用の危機打開、安心・安全なタクシーの確立10・24全国いっせい行動」の実施状況は、表@(略)のとおりである。
 中央行動は関東ブロック規模でとりくまれ、早朝のビラ宣伝(マスコミ各社前・霞ヶ関周辺、70人で1万枚配布)、交運共闘の「国土交通省、金融庁、厚生労働省への連鎖的な個人請願行動」(2000人)、怒りの霞ヶ関中央決起集会(全労連主催 於日比谷野外音楽堂、6000人)及び国会請願デモに参加した。また、自交総連の代表が国土交通省、厚生労働省と交渉を行うとともに、タクシードライバ法案大綱を持参して11の政党・会派をまわり、タクシーの実態を訴え法制化への協力を要請した。

2.省庁交渉の結果
 省庁交渉は、10・24中央行動の一環として実施した。その結果は『月報』 302、2001年12月号に掲載したとおりである。
 10月24日 国土交通省(高松副委員長、今村書記長他9人)
      厚生労働省(領家委員長、今村書記長他6人)
 11月26日 国土交通省レクチャー(今村書記長他2人)

3.「政策学習強化月間」のとりくみ結果
 全組合員を対象に実施した「政策学習強化月間」のとりくみ結果は、表A(略)のとおりである。

(2) 重点争議組合支援のとりくみ

 産別の重点争議として位置付け、これを支援・激励するためにとりくんだ全組合員対象の任意の100円玉カンパの集約状況は、表B(略)のとおりである。

(3) 重点署名のとりくみ

 秋から年末の期間を通じて重点的にとりくんだ「働くルールの確立」(全労連)及び「介護タクシーの保険適用を求める要請」(自交総連)署名の集約状況は12月末現在、累計で次のようになっている。(詳細は、表C参照=略)

●「働くルールの確立」署名(目標6万筆)=1万6194筆(27地方)、達成率27.0%
●「介護タクシー保険適用」署名(目標6万筆)=1万3309筆(25地方)、達成率22.2%

 地方別の達成率では、次のような結果となった。(「働くルールの確立」署名のみ記載) 100%以上=山形、福島、山梨、広島、愛媛、徳島、佐賀、大分、鹿児島
 80%〜 =山口
 60%〜 =北海道、宮城、香川
 40%〜 =群馬、石川、高知、福岡
 20%〜 =青森、東京、静岡、京都、大阪、奈良、長崎
 20%未満=埼玉、千葉、神奈川
 未集約 =茨城、和歌山、兵庫、岡山、熊本

(4) 悪政ノー、国民的諸課題のとりくみ

 悪政ノー、国民的諸課題のとりくみでは、全労連や各民主団体の具体的な行動提起をうけて積極的な参加体制をとってきた。秋最大のとりくみとなった「テロ糾弾・報復戦争やめろ、小泉『改革』に異議あり、不況打開、大企業のリストラ反対・雇用守れ、医療改悪やめろ」の10・23国民大集会は、東京・明治公園でひらかれ、全国から2万5000人が参加。自交総連は、東京地連を中心にとりくんだ。

3.闘いの到達点とその評価


(1) 主要な闘いにおける成果と教訓、今後の課題

1.運用基準の通達等にかかわる評価と問題点
 最終場面を迎えていた「運用基準」策定に際しては、ひきつづき国会の場での政府答弁、衆・参議院での附帯決議の完全履行における政府・行政の責任追及を重視しながら、「概要案」(6月28日に公表)に対峙する『自交総連の評価と意見』をふまえ可能な限りの要求反映を求めてきた。
 しかし、国土交通省は結局のところ、「真摯に再検討し、責任ある対応をもって適切な措置を」などの要望意見を事実上、無視し続ける対応に終始した。国土交通省は10月26日、タクシーの緊急調整措置及び運賃関係に関する運用基準の通達を各地方運輸局へ通知した。それは、緊急調整措置の発動要件や運賃関係(バラバラ運賃の拡大と大幅な割引制度の導入)の基準において、「概要案」の中味そのままで押し切る内容のものであり、『このままでは、タクシー労働者のくらしと雇用はいっそう悪化し、取り返しのつかない安心・安全にかかわる不測の事態が生じかねない』とするわれわれの疑問、懸念にはまったく答えるものではなかった。
 そうした一方、個別の部分的な歯止め策では一定の活用できる回答をかちとっている。その一つは、「運転者の選任」(運輸規則第35、36条)と違法な臨時・アルバイト雇用の根絶にかかわるもので、「いままでの通達に書いてあることは、(来年2月以降も)キチンとやっていく」 「定時制乗務員の定義を明確にし、しばりをかける」と確約した。二つ目は、「(免許制から許可制に変わるものの)参入条件は、いままで以上にきびしい事前チェックのものになっているし、事後チェックもきびしくやる。法違反の事業者については厳正に処分する」と、明言していることである。
 すでにまた、国土交通省は、8月29日付で発した「(許可)申請に対する処理方針」の『運転者』の項で、「事業計画を遂行するに足る員数の有資格の運転者を常時選任する計画がある」「適切な乗務割り、労働時間、給与体系を前提」「定時制乗務員を選任する場合には、適切な乗務割りによる乗務日時の決定等が適切になされるものであること」などを義務付けている。
 これらの内容に注目し、参入及び増車への歯止め策として、さらに悪質経営者対策を強化するものとして有効に活用することが求められている。

2.「タクシー地域協議会(仮称)」の設置と今後の課題
 「タクシー地域協議会(仮称)」の設置を求める要求では、この間の全国的なとりくみ強化の反映もあり、国土交通省は8月29日付で、「タクシー事業の適正化の推進のための話し合いの場の設置について」を発し、いま現在全国的に、各都道府県単位での設置がすすめられている。
 すべての地連(本)は、この課題を軽視することなく、正式な構成メンバーの一員として関与するよう努め、積極的に労働者の労働条件改善問題や安心・安全な輸送の確立の課題をとりあげ、その達成にむけ実効ある協議の場として機能するよう奮闘していくことが重要である。

3.職場要求の獲得状況とその評価
 賃下げ「合理化」への対応、倒産・身売り対策、経営改善闘争の強化など各地方の主力組合の現状を反映し、職場要求の具体化とその獲得をめざす闘いでは、散発的なとりくみとならざるを得ない事態となった。
 また全体として、年末一時金の獲得を軸にたたかった東自教8社8労集交など自動車教習所や技職、特定地域のハイヤー・タクシー職場を除いては、『とりくめず、要求が未提出』であったり、あるいは要求提出していても『思うような成果がかちとれないまま集約』など職場活動のあり方、闘争力の現状評価を含め多くの問題を残すとりくみ結果となっている。

(2) 組織の強化拡大の到達点

 9〜12月における未組識の組織化など新規加盟は、6地方(北海道、宮城、神奈川、広島、高知、長崎)で7組合、組合員数にして72人プラスαとなった。もっとも奮闘したのは北海道で2組合52人、自教の組織化も成功させている。また、長崎で「自交一般労組」(個人加盟方式)を発足させ、地元紙にも大きく報道された他、神奈川・富士交通支部が美が「一桁組合」から脱却し、職場内多数派への前進をかちとっている。
 加盟理由では、熾烈化するリストラ「合理化」の下で、『将来への不安』や『やりたい放題の経営者への怒り』『頼りにならない企業内組合などへの不満』が、多く寄せられているのが特徴である。 一方、全国的な組織実勢の動向は集約しきれていないが、解散・消滅による組織減は、地方報告をまとめると10地方12組合 326人に及んでいる。傾向としては、『使い込み事件の発生による混乱』『少数組合での組合員の無気力感』『産別から離れ、企業内組合の力で』に加え、 『組織攻撃に絶えられない』などが顕著となっている。
 到達点を端的に表現すれば、奮闘によって一定の前進をかちとっているものの、依然として組織減に歯止めがかからない事態が続いている、といわざるを得ない状況下にある。
 緊急的な課題としては、職場活動の弱体化や組織機能の喪失など組織そのもののもつ欠陥部分をチェックし、早急に改善・克服する地連(本)、総連本部の援助・指導をいっそう強化しなければならないことである。
 そのポイントは、@(大会、執行委員会、職場集会など)当然たる機関会議は定期的に必ず開催させる、A要求をとりまとめる努力を促し、要求書として経営者に提出し回答を求めることの重要性を徹底する、B組合費の確実な徴収、予算に見合った適切な支出措置など含め健全な財政活動の基本原則を確立する−など労働組合としての初歩的な機能・役割を遂行できる体制強化をはかって行く必要がある。さらには、ひきつづき組織の拡大を最重要課題として、“(何をやるにしても)数こそ力”の基本原則を共通の認識としつつ、『多数派への組織建設』を急ぐことが重要となっている。


 


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