2010年度運動方針(案)

自 交 総 連


も く じ
I 情勢の特徴と運動基調
II 主な運動課題と対応する基本方針
III 産業別組織体制の確立・強化にむけて

I 情勢の特徴と運動基調

1.運動の到達点に学び、規制強化の流れを確かなものに

(1)タクシー運転免許構想とあるべき政策転換の方向

昨年11月の中央行動で、横断幕を掲げタクシー減車政策を要求する参加者
昨年11月の中央行動で、横断幕を掲げタクシー減車政策を要求する参加者

 タクシー活性化法(=「タクシー事業の適正化及び活性化に関する特別措置法」)は、「与野党全会一致による共同修正案の成立」という重みのある法律として、昨年10月1日に施行された。
 この法律がもっている最大の意義は、(1)地域協議会設置のもとに、地域計画が具体的に作成され、労働条件の改善や需給調整、運賃の適正化を含むタクシー政策のあり方の検討が、関係者の間で協議される仕組みとして実現したこと、(2)1951年の道路運送法制定以来、免許制の時代にもなかった減車の枠組みが初めてつくられたこと、(3)特定地域では、新規参入要件を厳しくするとともに、増車を認可制に戻したこと、(4)5年後の検討が規定されてはいるが、時限立法ではないことであり、実質的に規制緩和を見直し、規制強化へと政策転換をはかる方向が明確になった点にある。
 今日の到達点は、これまでの粘り強い規制緩和反対闘争の推進、運動の力の反映であり、自交総連の政策的優位性を見事に示したものといえる。このことを、今後の闘いの展望に照らして大きな確信としておく必要がある。
 2010年春闘をもって開始された特定地域における減車闘争は、3・4中央行動、続く4・14全国統一ストライキを中心とするとりくみにより一定の前進をかちとってはいるものの、減車による労働条件改善への貢献度や実効性においては、景気回復の動向を含め不確定な要素が残っている。
 減車闘争は、まだ緒についたばかりであり、適正台数の実現にむけた闘いは、これからが正念場を迎えることになる。われわれの今後の運動を通じて、タクシー活性化法の実効性が問われ、あるいは真の問題解決をはかるための新たな施策の検討が余儀なくされることも確実な流れとなろう。
 自交総連は、タクシー労働者の切実な関心・要求から出発しながら、21世紀の日本のタクシーの進むべき道として、「輸送の安心・安全」、「誇りと働きがい」、「地域貢献」を確実なものとするタクシーシステムの確立を掲げている。
 99年1月に発表した「タクシー運転免許構想」は、タクシー運転免許を国家資格として法制化することで、タクシー運転者の資質を高め、数を制限することにより、無謀な増車を不可能にし、適正な台数を維持するとともに、事業そのもののあり方を経営者優位から運転者優位に変革して、利用者と運転者こそが主人公となることをめざすものである。
 それは、タクシー運転免許制度のもとに、運転者には、法人企業に雇用されて働くだけの道ではなく、個人事業者あるいは個人協同の事業形態も認められるなど、「働き方の選択権」を保障する仕組みへの転換をめざすという将来展望における方向性も明らかにした。
 これまでのタクシーの枠組みを超えた発想の転換が重要である。われわれがめざす政策転換の方向は、“もうひとつのタクシー 確かな再生へ”に集約されており、運転者優位の仕組みの確立こそが求められる。
 規制緩和実施後、自交総連がこれまで重視してきた政策目標(将来像への接近)は、「台数規制と運転者優位の仕組みの確立、タクシー運転免許の法制化」と、「地域に密着した公共交通機関たるタクシーの発展」の2つである。自交総連は、この目標を運動の基本に据えつつ、直面する現状の危機打開と解決策の実現にむけて全力をあげる。

(2)今こそ、情勢変化に適応した運動の強化・前進を

 今日の情勢変化は、職場での闘いを基礎に産業別、地域別、全国的な統一闘争を飛躍的に発展させることの重要性をわれわれに教えている。
 自交総連という産業別全国組織は、ハイヤー・タクシー、観光バス、自動車教習所等に働く自交労働者の切実な声である労働条件の改善と権利拡大への期待に応えなければならない基本的任務を負っている。
 重要なことは、企業の枠内に閉じこもった考え方や活動スタイルを改善するための努力を惜しまないことである。闘いの基本は、何といっても経営者の責任を追及する職場闘争にあるが、その闘いと結合した政府・行政への大衆闘争等により具体的な実利・実益を獲得していく産業別統一闘争の方向をめざしていかなければならない。
 こうした運動の強化・前進なくして、正しい問題解決の方向はありえない。
 タクシーにおける最大の闘争課題は、経営者(団体)、政府・行政をして地域計画にもとづく過剰車両の削減(=減車)を早急かつ確実に実現させることにある。確実な賃金増をはかるためには、減車闘争の強化とともに、需要量の拡大すなわち個人消費の拡大を軸とする景気回復運動との結合をはかることが求められる。
 したがって、外需頼みから家計・内需主導への日本経済へと切り替えさせていく課題は、われわれ自身の利益そのものであることをふまえ、“働く貧困層をなくせ、まともな雇用の確保を”“すべての労働者に時給1000円以上の賃金を”の社会的世論を喚起し、要求実現をめざすことが極めて重要である。
 同時に、この闘いを通じて、実践的かつ産別的な視点を持った幹部・活動家の育成に力を注ぐとともに、実勢3万人の回復をめざす組織拡大の課題において、目覚しい成果をかちとることが強く求められる。

2.貧困・生活危機突破、存在感ある組合運動の前進にむけて

(1)問われる企業の社会的責任と労働組合の今日的任務

 ハイヤー・タクシー労働者の賃金は、08年において、1982年当時の賃金水準と同額の271万円(厚労省調査)にまで低下しており、他産業労働者(=510万円)との比較では239万円の格差が生じている。
 09年の場合、他産業労働者の調査結果はまだ公表されていないため、格差の実態は明らかではないが、タクシーの賃金水準そのものは243万円(同調査)で、前年より28万円低下している。このうち200万円に届かない地域が前年の4県から11県(岩手、秋田、福島、茨城、福井、滋賀、鳥取、高知、大分、宮崎、沖縄)へと拡大し、最賃割れが各地で発生している実態が今回の調査からも浮き彫りにされている。
 アメリカ発の世界経済危機に端を発した日本経済の深刻な悪化が、労働者・国民のくらしに重大な打撃を与える中で、タクシー需要は依然として回復の兆しを見せてはいない。今年に入ってからも、運送収入は対前年同月比マイナスの状況が全国各地で続いており、賃金低下はいっそう深刻化している。
 一方、経営危機は一段と深まり、大都市・地方都市・郡部を問わず倒産、廃業による全員解雇や、リストラ「合理化」など生き残りへの新たな提案が各地で相次いでいる。
 生活破綻に陥る労働者や過労死、健康破壊が増加し続けていることも見逃せない。貧困化に伴う運転者の資質やモラルの低下も起こり、乱暴運転、接客態度不良、乗車拒否、地理不案内など利用者からの苦情は依然として減少していない。
 自動車教習所は、構造的な問題である少子化傾向を背景に、入所者の減少をカバーするルールなき競争の激化など厳しい環境下におかれている。経営者の多くは、料金値引き、日曜・夜間営業の延長などの生き残り策に力を注ぎ、労働者からは働く意欲と将来展望を奪っている。人件費の削減やパート・契約指導員の導入をはじめ、これまでかちとってきた権利を剥奪する攻撃は、極めて問題である。
 観光バスでは、2000年2月からの規制緩和後一気に新規参入が相次ぎ、09年3月末時点で80%増の4196事業者へと驚異的な伸びを示している。
 過当競争の激化は、貸切り単価の切り下げとなり経営そのものの危機を現出してきたが、景気悪化にも影響され、倒産、企業閉鎖による失業・雇用不安は一段と深刻化している。また、利用客減や大手旅行業者による無理な運行計画の強要、運賃・料金ダンピングによる過当競争の打開策として、賃下げ「合理化」やワンマン運行による長時間労働の押し付け、「正規」をアルバイト・派遣運転者に置き換える攻撃が続いている。理化」・ワンマン運行による長時間労働の押し付けに加え、「正規」をアルバイト・派遣運転者に置き換える攻撃が続いている。

(2)原点・原則に立ち返り、たたかう自交総連の本領発揮を

 不合理で納得のいかない賃金水準、ひどすぎる職場環境と格差社会、ルールなき競争と権利抑圧の現状を変えるために奮闘することが求められている。
 この闘いにとって重視すべきことは、「企業の社会的責任」が大きく問われていることである。「企業の社会的責任」(CSR)は、法令遵守や製品・サービスの安全確保といった当たり前の行動に加えて、環境対策、人権尊重、地域・文化貢献など幅広いとりくみを企業に求めるものである。言い換えれば、「利潤追求だけでなく、まっとうな賃金、税金を払い、雇用も増やすなど企業も社会の一員としてのふさわしい行動を」という考え方であり、その際、企業には労働者や取引先、消費者、投資家、株主、地域社会など幅広い利害関係者への情報公開と誠実な対話が必要とされている。
 地域協議会で合意された「適正と考えられる車両数」にもとづく減車の実現は、タクシーに関係を有する地域の多様な関係者に対する最低限の社会的公約であり、その実現の可否は、タクシー経営者の資質のあり方と企業の社会的責任が鋭く問われる問題でもある。
 本来的にいえば、タクシー労働者には、社会的水準の労働条件確立を保障するに必要・不可欠な「適正実車率に見合った車両数、減車の実現」と「適正な運賃」を担保する措置が講じられなければならないものである。したがって、すべての地連(本)は、経営者が地域公共交通機関の一翼を担う者としての責任の重さを自ら自覚し、減車に大きく踏み出すよう、労働組合として積極的な役割を担うことが重要である。
 こうした視点を大切にし、法人経営の存在意義を問い、事態改善のための責任を果たさせるために、自交総連は、CSR運動と政策闘争とを結合した闘いを推進する。
 労働組合の原点に立ち返った「組織点検」もまた重要な課題である。それぞれの職場・地域で対話と宣伝のとりくみを旺盛に展開しつつ、広範な仲間との相互信頼にもとづく関係を確立することが不可欠である。
 また、日常的な助け合いと生活相談、みんなの要望・期待に応える雇用、賃金、労働条件、権利における実利・実益の確保、さらには道交法闘争や職場環境改善など諸活動の再構築をはかる必要がある。
 たたかう自交総連の本領発揮が期待されている中で、あらためて、“みんながつくった自交総連”の原点を思い起こすことが求められている。
 その上で、職場で労働組合としての存在意義を示し、同時に、主戦場である地域を視野に入れての運動との結合をはかりつつ、自交労働者の生活防衛闘争の先頭に立つことが重要である。

3.目線を地域に、政治の民主的転換の課題と結合して

(1)労働組合の優位性を生かし、地域からの変革を

4・14ストを行うタクシー車両
4・14ストを行うタクシー車両

 政権交代で誕生した鳩山・民主党政権は、旧態依然とした「カネと政治」疑惑、沖縄・普天間基地無条件撤去を求める沖縄県民の声に耳を傾けない政策決定への批判などの前に、わずか8か月で退陣に追い込まれた。
 しかし、次々と国民の期待と公約を裏切った政権の閣僚として、その失政に共同責任がある菅新首相には、まったく反省がみられなかったばかりか、消費税10%への大増税や大企業の法人税率引下げを打ち出すなど自公政権以上の乱暴で危険な政治を推し進めようとしてきた。
 このような政治姿勢に対する国民からの回答は、極めて明瞭であった。国民は、昨年の総選挙で自公政権に退場の審判をくだし、今回の参議院選挙では民主党政権に厳しい審判をくだした。同時に、今回の結果が、国民が自民党政権に戻ることを求めたものといえないことも明らかであろう。
 自交総連は、こうした政治的局面のもとで、(1)働くルールの確立、社会的格差と貧困の是正、(2)安心・安全な地域社会の実現、(3)戦争をしない・参加もしない日本の追求――をキーワードに国民的共同の飛躍的前進をはかる。
 第1は、働くルールを確立し、格差と貧困を是正することである。これまで、市場経済万能論、弱肉強食の競争社会を進める構造改革が財界による政治支配によって推進され、日本経済と国民生活の矛盾を深刻化させてきた。長期失業者やワーキングプア、生活保護世帯、ホームレスの増加など、政府の政策によってつくりだされた社会的格差と貧困の克服こそ、今日の日本社会の焦点である。「働く貧困層」をなくすとともに、雇用保険を抜本的に充実し、失業しても次の職業を安心して探せる社会にするなど人間らしい労働のルールの確立が求められる。
 第2は、安心・安全な地域社会の実現をはかることである。日本の経済危機は、構造改革路線によって貧困と格差が広がるなど、社会のあらゆる分野でゆがみが深刻になっている。地域経済の深刻な存立の危機、過疎化と高齢化、中心商店街の「シャッター通り」化、病院の廃止・縮小や鉄道の廃線、路線バスの撤退が進行することによって地域共同体の崩壊が進んでいる。地方自治体の財政破綻も一段と深刻さを増し、工場閉鎖と人口の流出、大幅な税収減によって住民のもっとも身近な社会単位である地域の基盤は危機に陥っている。
 第3は、戦争をしない・参加もしない日本を貫くことである。イラク戦争の失敗を大きな契機として、アメリカの一国覇権主義が破綻に直面し、いま世界は大きく変わりつつある。その波はアメリカにまで及び、オバマ大統領が「核兵器のない世界」の追求を世界に宣言するなど、画期的な前向きの変化が生まれていることは重要である。

(2)要求実現の立場で、国民的共同の飛躍的前進を

 組織された労働者の優位性を発揮し、要求実現の立場で、もう一段も二段も高いレベルでの闘いに決起していくことが求められている。今こそ、これまでに培ってきた自交総連の政策的優位性と、どこにも負けない粘り強い闘争力、そして社会的影響力の大きさを駆使しなければならない。
 さらに、政治の民主的転換をかちとり、日本社会と経済の健全な発展、平和に貢献する日本をめざすには、“労働組合運動からの接近”を重視し、恒常的かつ継続的に国民的共同の可能性を模索する必要がある。自交総連は、そのために公務・民間労働者の共同を前進させることや、労働者・地域住民一体となった地域変革のための共同実現に力を注ぐ。
 タクシー・自動車教習所・観光バスなど業種の特性に立脚した地域住民との接点を重視し、安全性と移動の権利確保や環境問題を共同の運動課題として位置付け、具体的な政策をもって地域に積極的に打って出ることも重要である。こうしたとりくみは、組合員一人ひとりの政治意識を高めることにも大きく貢献する。
 自交総連は、自交労働者と事業、日本の明るい将来を築くために、これまでも困難に正面から立ちむかい、団結の力で乗り越えてきた自交労働運動の歴史と伝統に確信を持ち、それに恥じない底力を発揮する。

II 主な運動課題と対応する基本方針

1.4つの要求課題と運動の基本方向

(1)社会的水準の労働条件確立への接近、権利の確保

(1)賃上げと底上げ闘争の強化

 1) 社会的水準の労働条件確立など「権利要求」の視点を大切にし、それへの接近にむけた要求闘争を重視する。そのため一定の時期に闘争を集中させてたたかう春闘と通年闘争としての政策闘争を結合してとりくむ。
 ○ 減車による適正な台数と上限運賃の確保を最重点課題とし、地域の経営者共同の責任による労働条件改善のための環境整備を求めていく。
 ○ 自動車教習所、観光バスでは、経営環境の改善を重視し、仕事量の拡大など職場政策要求への合意、実施を明確にしたとりくみ強化をはかる。
 2) 状態悪化に歯止めをかける闘いでは、地域における賃金底上げの視点を軸に最低賃金法違反の一掃、累進歩合制度の廃止(93号通達)、足切りの引下げを重点課題としてとりくむ。また、オール歩合給賃金の改善策では、最低賃金を基礎とした固定給部分の制度的確立を重視したとりくみを進める。
 3) 年次有給休暇の不利益取扱いの是正、割増賃金の適正な支払いなど法定労働条件の確保と交通事故負担金、罰科金等の廃止をはかる。
 4) 労働条件の高位平準化と到達闘争を全国的に展開し、地方(地域)での労働条件の格差是正をはかる。また、「職場・地域から時給1000円未満をなくそう」の課題を重視した運動を推進する。さらに、地域別最低賃金の改善と全国一律最低賃金制度の確立にとりくむ。

(2)リストラ「合理化」反対、権利の確保

 1) 労働者犠牲のリストラ「合理化」に反対し、労働者・労働組合の権利尊重、賃金・労働時間、雇用規制などにおける働くルールの確立と企業の社会的責任(CSR)を問う運動の推進をはかる。
 ○ タクシーでは違法な日雇い・アルバイトの禁止(運輸規則第36条)、雇用の正常化にむけての地域的運動にとりくむ。
 ○ 名義貸しであるオーナーズ制度や「業務委託契約」等への対策については、地連(本)毎に情報収集や調査を行い、運輸局交渉を通じて根絶をはかる。
 ○ 整理解雇の4要件(企業の維持・存続にとっての差し迫った必要性、解雇回避についての努力、労働者側の納得、人選の仕方が客観的・合理的なものであること)など解雇権濫用を禁止するルールの確立をはかる。
 2) 運輸・労働行政の監督指導責任を明確にさせ、道路運送法や運輸規則、労働基準法等を無視し、労働者・労働組合の権利を認めない悪質経営者への厳しい措置や厳格な処分を迫る。
 3) 労働基本権や労働基準法など基礎知識の総学習運動を日常的に重視し、職場・地域での権利総点検活動を展開する。
 4) 倒産や廃業・身売り対策については、“いつでも起こり得る”ことを前提に、地連(本)として学習会の開催や対策会議の定期化、機関会議での情報交換などチェック機能の強化を含め体制強化をはかる。
 5) 職場で起こっている差別、支配介入など不当労働行為の一掃を重視する。また、裁判(地労委)一辺倒の闘争におちいる弱点を克服することに努め、職場を基礎とする産業別レベルでの反撃体制の確立、地方労連などの支援体制と社会的包囲との結合を重視する。
 6) 各種政府委員の獲得などについては、全労連の具体的方針にそった闘いの展開をはかる。とくに、中央・地方で労働者委員候補者を立て、共同のとりくみとして運動強化をはかれるよう奮闘する。
 7) 日雇い派遣の禁止や特定業種に限定する派遣の規制、派遣先企業の責任の明確化など労働者派遣法の抜本的改正を求める。

(2)必要な規制の維持・強化、将来像を見据えた政策要求の実現

 1) 現在生じている供給過剰の是正、労働条件低下の防止策等の解決をはかるため、具体的な政策要求にもとづく事態改善のとりくみ強化をはかる。
 ○ 「特定地域における減車闘争の当面する重点」(2010年春闘方針・補強文書)にもとづき、減車闘争の継続強化をはかる。
 ○ 「地域分権の確立を基礎に、利用者・住民、事業者、タクシー運転者の声が反映する官民合同の委員会を設け、タクシーサービスのあり方や適正なタクシー台数、運賃などの重要事項の決定権を与えるようなシステムの確立をめざす」(自交総連の政策提言)としていることをふまえ、タクシー活性化法にもとづく地域協議会の機能強化、権威ある機関としての役割発揮を求めていく。
 ○ 08年6月に施行された政令指定都市等13地域における運転者登録制度については、良質な運転者の確保という本来の目的に適った実効性のある仕組みとして定着させる。また、運転者の登録取消処分などに係る対応については、懲罰的制裁主義を排し、公正、教育・指導、公開の原則を尊重するほか、背後責任の追及を明確化するよう求める。
 ○ 「交通基本法」制定の問題については、交運共闘及び交運研との連携のもとに、交通権理念にそった各公共交通機関としての役割と任務、安心・安全と環境保護、持続可能な交通体系の構築を考慮し対応する。
 ○ 東京の国賠訴訟上告審対策については、政策形成訴訟の視点を重視し、実態告発と国の責任の追及、運動高揚と世論喚起の場として位置付けるとともに、最大のテーマである「原告適格を認めさせる」闘いの支援・協力体制を継続する。
 2) プロドライバーとして必要な運転技術の向上、接客態度の確立に努めるとともに、移動制約者や高齢者の輸送についてのとりくみ推進をはかる。また、移動制約者らの交通権を保障するため、国が責任を持って運賃補助などの助成措置を講じるよう求めていく。
 3) 地方自治体に、タクシーを公共交通機関として位置付けさせ、タクシー問題を担当する部局を設けさせる。また、乗り場の増設やバスレーンへの乗り入れ、乗合タクシーの活用、福祉・介護政策とタクシーの役割及び労働者の関与のあり方について検討・具体化させる。
 4) 自教関係では、「自教労働者の権利と社会的地位の向上、事業の将来のために」(03年4月、第4回中執決定)にもとづき、とりくみ推進をはかる。とりわけ、地域の交通安全教育センターとしての機能強化に関する政策提言の実現、「職務領域や業務範囲の拡大」を重視していく。
 5) 観光バス関係では、公正な取引ルールの確立、安全性と雇用・労働条件の確保のための政策要求を掲げてとりくむ。とくに、旅行会社による不当な低運賃の押し付け、運賃ダンピング・区域外営業など法違反の是正、基準が緩すぎる走行距離規制の改善、過労防止措置、労働条件改善にむけての環境整備を重視していく。
 6) 対等・平等による正常な労使関係の確立、一致する政策課題にもとづく協力・共同の追求をめざす。
 7) 社会貢献の観点を重視し運動の強化をはかる。とくに地域住民との接点を追求し、住みやすい街づくりとの関係で、「交通権の確保」「安全教育、交通事故の根絶」といった分野での関与のあり方を積極的に検討し、労働組合としての社会参加を追求する。
 8) 地球温暖化防止運動については、「タクシー減車による地球温暖化防止への貢献」(08年5月発表、自交総連作成)を活用し、実際の減車闘争に役立たせるなど交通政策からの接近をはかる。

(3)悪政の打破、反核・平和、国政の民主的転換

 自交総連は、安保優先・大企業本位の政治の転換、平和・民主主義擁護、憲法改悪に反対する国民多数の世論結集をめざす運動の強化を重視し、全国革新懇が示す「3つの共同目標」をいっそう高く掲げてとりくむ。具体的な運動については、全労連をはじめ民主的な諸団体の行動提起を積極的に受け止め、その前進をめざしていく。地方政治の分野では、地域住民のくらしや営業、地域経済を守る地方自治体を建設していくために奮闘する。

(4)自交総連3万人の回復と強大な全労連の建設

 1) 実勢3万人の回復にむけて、全国的な組織強化拡大運動を推進する。
 ○ 重点目標として、「一桁組合からの脱却、少数派から職場内多数派へ」「二桁の地連(本)は100人以上の組織勢力へ」を追求し、各地連(本)での最高時勢力の回復をめざす。各地連(本)は、独自に策定した計画にもとづき中央のとりくみと結合したとりくみ推進をはかる。
 ○ 空白県の組織化については、近接ブロックの協力や地方労連との連携をはかり未組織宣伝行動などを計画する。
 ○ 各地連(本)は、「地域タクシー労働組合」(個人加盟方式)の設置を行う。また、非正規雇用や個人タクシー、自教・観光バス労働者の組織化を、運動方針に明確に位置付け必要な対策を具体化していく。
 ○ 各地連(本)は組織点検を行い、機関会議欠席組合や組織機能を失っている少数派組合への対策を重視しオルグ強化を含む必要な手立てをとっていく。総連本部としては、体制・機能の確立がなされていない地連(本)への個別オルグ、援助と指導を重点的に行う。
 2) 一致する要求にもとづく共同の拡大をはかる。減車、リストラ「合理化」反対、廃業・身売り問題対策等での職場内共同を推進するほか、政策提言の実現を重視した地方(地域)内共同を積極的に進める。
 3) 「200万全労連建設と600地域組織確立」をめざし、中央・地方で全力をあげる。また、交運共闘の組織・運動面にわたる機能強化にむけ積極的な役割を果たすとともに、各地連(本)は交運関係組合との共同拡大、地方交運共闘確立への努力を払う。

2.当面する運動の基本的展開

(1)2010年秋から2011年春闘にむけた闘争の具体化

 2010年秋から2011年春闘にむけての闘いは、独自の産別要求・政策の重点と国民的課題とを結合し、春闘の前段闘争と位置付けとりくむ。闘いの具体化では、「2010年秋から2011年春闘にむけた闘争方針」を第4回中央執行委員会(9月8〜9日)で決定しとりくみを進める。

(2)2011年春闘の準備

 1) アンケートの実施については、全労連の『働くみんなの要求アンケート』を基本とし、全組合員と広範な未組織・未加盟の労働者を対象とする独自のものを作成しとりくむ。
 2) 春闘方針は、11月中に執行部原案をつくり、1月下旬には中央委員会をひらき決定する。春闘方針の職場討議は、1月初旬から執行部(案)にもとづいて行えるように準備する。

3.通年闘争の諸課題とそのとりくみ

(1)通年闘争のとりくみ

 1) 全労連や民主的諸団体がとりあげる国民的諸課題について積極的に対応していくこととし、原水協、全国革新懇、非核の政府を求める会、安保廃棄中央実行委員会、国民救援会などとの共同を発展させる。
 2) 「自交労働者月報」の購読者拡大とその積極的活用、「自交労働者新聞」の内容充実を重視していく。また今年度は、機関紙コンクール・写真コンテストを実施する。教宣学校は、ブロック毎に計画を立て本部からの講師派遣を行う形で実施する。
 3) 不当弾圧や解雇、争議権制限に対するとりくみ強化をはかる。関係弁護士交流会については、中執メンバー全員の義務参加のもとに今年度も開催していく。
 4) 在職死亡(過労死や職業病、自殺)の増加など健康破壊が深刻になっていることを重視し、自交労働者が健康で生き生きと働ける職場環境を確立させるためのとりくみ強化をはかる。
 ○ 労働者の安全と健康を確保するため、職場内に安全衛生法にもとづく安全衛生委員会を設置し、安全衛生の確立と機能の充実をはかる。
 ○ 事業者負担による成人病検診の義務付けとともに、検査項目にマーカー検査(ガン検査)を入れるようにする。定期健康診断の受診率を高め有所見者の再診を義務付けさせる。
 ○ 働き過ぎによる過労死など労働災害をなくすための総合的な事前対策を重視する。不幸にも被災労働者が発生した場合には積極的に労災認定闘争を行う。
 5) タクシー強盗の増加を背景に警察庁が作成した「タクシーの防犯新基準」の普及促進と具体的対策の実施を求めていく。とくに、(1)防犯指導及び防犯訓練の内容・機会の拡充、(2)運転席後部の防犯仕切板の形状についての見直しと明確化、(3)車内防犯カメラ、異常事態外部表示装置等の設置など、新基準で示された対策を経営者に講じさせる。
 6) 道交法闘争を発展させるため、引き続きとりくみ強化をはかる。
 7) 国際連帯活動については、国際労働運動の紹介に努め条件に応じて大衆的国際交流を検討する。

(2)共済活動のとりくみ

 共済活動が、構成員からの委任にもとづく構成員の相互扶助による福祉の向上を目的としていることをふまえ、自交共済及び自交共済年金への加入促進をはかる。また、福祉活動の一環として全労済及び全労連共済の各種制度普及に努め、厚生文化行事は条件によって計画していく。
 なお、共済契約に関する事務手続きを円滑に進めるため、全労済より必要最小限の範囲において個人情報の提供を受けることとする。

(3)政党との関係について

 労働組合と政党との関係は、以下の4原則をふまえ対応する。
 第1=政府・財界の反労働者・反国民的政策に反対してたたかうとともに、自交労働者の生活と権利、平和と民主主義を守ってたたかう政党と協力・共同の関係を保っていく。
 第2=前項の立場に立って、組合員の政治意識を高める活動を行う。
 第3=組合員の政党支持・政治活動の自由を保障していく。また資本や警察からの妨害・弾圧には、労働組合の立場から政治活動の自由を保障する見地でたたかう。
 第4=政党別選挙に際しては、特定政党・特定候補の支持は行わない。ただし、労働組合の要求実現とのかかわりで政策協定を結んだ革新・民主勢力共同の候補については、労働組合として積極的に支持していく。

III 産業別組織体制の確立・強化にむけて

1.執行体制と顧問の委嘱について

(1)機関会議開催の計画と本部専従体制

(1)機関会議開催の計画

 中央執行委員会の開催は大会及び中央委員会時を含め年5回とする。また「地方代表者との合同会議」を適宜セットし、地方の幹部・活動家育成に役立たせる相互の経験交流や学習、個別問題での相談などを重視した運営にしていく。常任中央執行委員会(中央闘争委員会を兼務)は年7回開催していく他、必要に応じて専門討議を行う。中央委員会は1月に開催し、2011年春闘方針を決定する。

(2)本部専従体制について

 総連本部の専従役員は、書記長及び書記次長2名、専従中央執行委員1名(ただし全労連派遣)の4名、書記については2名とする。

(3)産別指導体制の強化

 産別指導体制を強化するため、ブロック協議会の機能強化と運営改善をはかる。また、書記局内に自教担当を配置する。

(2)顧問の委嘱

 顧問弁護団は、東京法律事務所、馬車道法律事務所、代々木総合法律事務所、江東総合法律事務所の4事務所とし、引き続いて協力を要請する。また、公認会計監査については坂根公認会計士に委嘱する。

2.財政の確立と2010年度予算(案)

(1)2010年度予算(案)の編成にあたって

 (1)収支率100%を基本にした予算編成が困難である財政事情と繰越剰余金の次年度取り崩し限度額とを勘案の上、資金収支計画を立てる、(2)予測される収支差損の縮減をはかるため、支出面での費用削減と事務の効率化に努める、(3)本部への登録率は実組合員数の80%以上、会計年度途中の変更は認めないことを原則とする、(4)50%未満の地連(本)は3〜4年の実施計画を策定し登録増への改善をはかる、ことなどをふまえ2010年度の予算編成を行う。
 臨時徴収金については、全労連会館建設資金(=単産特別賦課金、総額3548万5000円)完納の状況をふまえ以下の措置を講じる。現行の600円をこのまま継続し、特別賦課金に充当してきた100円分については、組織対策費として運用する。具体的な配分は、長期争議組合支援(25%)、未組織宣伝対策費及び大型宣伝カー積立(25%)、ブロック宣伝還元金(25%)、組織対策費(15%)、その他予備費(10%)を基本に行う。

(2)各地連(本)の財政基盤の確立

 労働組合の日常活動の基本は、「組織」「教育宣伝」そして「財政」の3つであるが、軽視されがちなのが財政活動である。財政活動は、組合を運営し、日常的な活動を支える上で欠かせないものである。改めて財政活動の重要性を認識し、すべての地連(本)は財政的基盤の点検と計画的改善をはかる。また不団結や組織力の低下を招くことになる不明瞭な財政支出や「使い込み」などをチェックする機能を確立する。
 会計報告は定期的に行い「公開の原則」を貫くなど会計面における民主主義の徹底をはかる。各地連(本)は、学習会の機会などを活用し、組合会計の基礎的知識を関係者が身に付けるように努める。総連本部としては、必要に応じて講師派遣を行う。



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