海外ライドシェア企業と国内タクシー事業者の連携についての見解

2018年2月2日 自交総連

 1.全タク連は1月17日、「訪日外国人向けタクシーサービス向上アクションプラン」をまとめ、国内のタクシー事業者が海外のライドシェア企業(プラットフォーム企業)と配車アプリで連携をすすめる方針を示した。

 すでに昨年秋以降、第一交通産業が中国の滴滴出行(ディディ・チューシン)と連携して配車アプリの運用を始めると発表、米・ウーバーは国内でのタクシー事業者との連携をねらい、淡路島で実証実験をすすめようとしている。ソフトバンクはウーバーや東南アジアでシェアを持つグラブ・タクシーなどに多額の出資を行い連携をつよめている。

 こうした動きについて、自交総連はつよい懸念を表明し、海外プラットフォーム企業との安易な連携には反対するものである。


 2.全タク連は、アクションプランの目的を「訪日外国人のニーズに対応」「母国と同じタクシー・ハイヤー利用環境づくり」のためとしている。

 しかし、海外のプラットフォーム企業のこれまでの動向を考えれば、国内タクシー事業者との連携は、日本での自家用ライドシェア合法化が簡単には実現できないことから、合法化をすすめる段階的手段として、当面は、合法的なタクシーで、配車システムに海外プラットフォーム企業のスマホ配車アプリを使うことで、「便利」なスマホ配車の認知度を高め、いずれは自家用車や自動運転等によるライドシェア実施への道筋をつけようとするものである。


 3.海外プラットフォーム企業のスマホ配車アプリが国内のタクシー事業者に取り入れられるようになれば、運転者の労働条件にも重大な影響が及ぶ。

 プラットフォーム企業が提供するシステムは、タクシー事業者が手数料を支払って利用することになる。その手数料は、仮に最初は安くても、利用実態に応じて次第に高額になることは容易に予想できる。この手数料は事業者自身、最終的には利用者が負担するべきもので、その負担を運転者に転嫁することは許されない。しかし現在でも、4年前に国会決議で指摘されているにもかかわらず、カードやチケットの手数料など不当な運転者負担を強要している事業者が多数存在している。アプリ使用手数料等が新たな運転者負担となり、賃金が減額されることには、断固反対していく。

 また、現在、無線による配車システムを使っている事業者がスマホ配車アプリにシフトしていけば、無線関係の要員の合理化、人員削減も想定され、雇用を守る取り組みを行わなければならない。


 4.海外プラットフォーム企業との連携は、公共交通機関としてのタクシーの役割をはたすうえでも、深刻な問題が生じる。

 現在、ウーバーは、東京でハイヤー企業と提携してスマホアプリによる配車事業を行っているが、そこでは、需要が多い時に運賃が数倍に跳ね上がる「サージ・プライシング」システムが適用されている。タクシーの運賃は認可運賃であり、その時々の需要で勝手に値上げして高い運賃を取っていいはずがない。にもかかわらず、関東運輸局は「旅行商品」として提供しているならば違法ではないとの姿勢を示していると報道されている。

 サージ・プライシングが認められれば、現行の道路運送法に基づくタクシーの認可運賃制度は崩壊し、形骸化してしまう。利用者の利益が守られず、タクシーの公共性は失われる。海外プラットフォーム企業との連携のなかで、こうした契約が強要されかねない点も警戒しなければならない。


 5.海外プラットフォーム企業は、強大な資本力をもち、世界中で事業を展開している企業である。最初は部分的な提携で、スマホ配車の利用も訪日客等に限定的だったとしても、これまで各国で利用を急拡大させてきた実績から、国内利用者もスマホ配車に移行していくことが予想される。

いずれ、プラットフォーム企業が配車実績において支配的な地位を確立すれば、国内のタクシー事業者はその下請け的な地位に甘んじなければならなくなり、「庇(ひさし)を貸して母屋を取られる」結果となりかねない。公共交通事業者としての社会的責任を果たせなくなり、影響は利用者・労働者にも及ぶことになる。


 6.海外プラットフォーム企業との連携については、不透明な首相官邸の動きも伝えられている。官邸から国交省幹部に指示があり、当初ウーバーとの連携に慎重だった全タク連のアクションプラン原案に国交省が不満を示して、ウーバーとの連携が明記されたとする報道もある。

 安倍内閣は、新自由主義の経済政策をすすめ、規制緩和やライドシェアの解禁にも前のめりであることは従来から明らかであり、規制改革推進会議はシェアリングエコノミーを大いに推進しようとしている。こうした点を考えれば、今回の連携の動きの背景には、政・財界を含めたライドシェア解禁、規制破壊の大きな流れがあることは明らかである。

 自交総連は、いっそうの警戒をつよめて、広範な利用者・国民と共同して白タク・ライドシェア合法化反対の運動を強化していくものである。

以  上



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