未来投資会議での自家用有償旅客運送拡大の検討についての見解

2019年4月4日 自交総連

 1.未来投資会議は3月7日、第24回会議をひらき、モビリティについての検討項目として、自家用有償旅客運送を実施しやすくするための見直し、タクシー相乗りの導入等をとりあげて論議し、出席した安倍首相は、自家用有償旅客運送の見直しを行い、観光客も対象とすることなどを指示したと公表されている。

 タクシー相乗りは2019年度中に実施、自家用有償旅客運送拡大についての道路運送法改正は、来年の通常国会に提案するとされている。


 2.今回、未来投資会議で取り上げられたのは、1.自家用有償旅客運送について、(1)タクシー事業者が協力する自家用有償旅客運送制度の創設、(2)観光ニーズへの対応のための輸送対象の明確化、(3)交通空白地の明確化、(4)広域的な取組の促進と、2.タクシーの相乗り導入について――というものである。

 自家用有償旅客運送は、すでに2016年の国家戦略特区法改正で、特区においては導入基準が緩和され、観光客の運送も可能とされているが、今回の検討は、全国的に交通空白地の規定を緩めて、観光客をも対象とする自家用有償旅客運送を、さらに簡単に導入できるようにしようとするものである。

 自家用有償旅客運送は、二種免許を持たない運転者が自家用車で旅客を運送するため安全性の面で重大な問題があり、公共交通機関がなく、他に代替手段がない地域で限定的に運用されてきたものである。その基準を緩めて実施しやすくすることは、安全が確保されない運送の拡大につながる。タクシー事業者が運行管理などで自家用有償旅客運送に協力するというのは、タクシー事業者を自家用車による運送行為に取り込もうとするものといえる。

 安心・安全が担保されない自家用有償旅客運送の導入基準を緩めて拡大することには反対である。国の補助金を増やして、もっとタクシーやバスの地域公共交通を活用することこそが求められる。

 タクシー相乗りについては、昨年1〜3月に東京で実証実験が行われ、9月に国土交通省から結果が公表されている。実験期間中の申し込み人数5036人のうち実際に相乗りを利用したのは494人でマッチング成立率は1割以下、モニターアンケートでも5割の人が「同乗者とのトラブルに巻き込まれるのではないか」心配と回答、利用したくない理由として「相乗りする人がどういう人になるかわからないから」が最も多かったとされる。

 利用者から期待されているとはいえず、安心・安全に懸念があるものを無理に導入しようとするのは、相乗りに対応する配車アプリの普及をおしすすめるねらいがあり、ライドシェア導入につなげる意図もあるとみなければならない。


 3.未来投資会議の検討について、事業者や国交省は、「タクシーが認められた」「ライドシェアを検討するという話ではない」との見方を示していると報道されている。確かに、検討項目で直接的にライドシェア解禁が議題とされたわけではないが、決して安心できるものではない。

 会議では、竹中平蔵議員が、今年1月のダボス会議(世界経済フォーラム年次総会)で、自身と安倍首相がUberのCEOと昼食会を共にしたことを明らかにして、Uberや滴滴、Grabなどのライドシェア企業の名をあげて、ライドシェア産業は近年もっとも成長した産業であるとし、「日本では既得権益者の猛烈な反対で、この成長機会を逃してきた」としたうえで、「自家用有償旅客運送制度を改善する提言がなされているけれども、これは突破口として非常に重要なポイントになる」と、その意図をあけすけに述べている。

 ライドシェア推進勢力の狙いは、ここに端的に示されており、自家用有償旅客運送の拡大など規制緩和の既成事実を積み重ねて、それを「突破口」にして、白タク合法化にすすもうという意図は明らかである。さらに、自家用有償旅客運送事業の運営にタクシー事業者を取り込んだり、相乗りのタクシー配車アプリの活用をすすめたりすることで、白タク合法化へ道を広げようとしているものと考えられる。


 4.自交総連は、白タク合法化=ライドシェア解禁につながる一切の規制緩和に反対し、竹中平蔵氏や安倍首相が、ライドシェア解禁の意図をもって規制破壊をすすめようとしていることに警戒心をもって、引き続き白タク合法化反対闘争を強化し、安心・安全な公共交通を守っていく決意である。

以  上



自 交 総 連