タクシー減車による地球温暖化防止への貢献
―ムダなタクシーを減らせば年間62万トンのCO2削減―

2008年5月 自交総連

 地球温暖化に関する話題がマスコミに載らない日がないほど、地球環境問題に対する国民的関心は高まっている。温暖化防止のために各人ができることをしなければならないというのは国民的な合意になっているといえる。また、温暖化の原因となっている温室効果ガス(その大部分は二酸化炭素=CO2)削減を批准国に義務付けた京都議定書の約束期間がいよいよ今年4月から始まった。わが国は条約上の義務として、実際に温室効果ガスを減らさなければならない。
 タクシー業界においても、車両の燃費向上やエコドライブなどCO2削減に向けたとりくみが行われている。これらのとりくみ自体は必要なことではあるが、なんといっても最大の問題は、ムダなタクシーを減らすことにほかならない。本稿は、このムダなタクシーによるCO2排出量を推計し、その削減効果を検証するものである。
 なお、計算に用いた数値は、原則として環境・運輸関係の各統計データがそろっている2005年度のものを用い、計算は原数値(注1)で行っているが、表示する数値は原則として有効数字3桁に統一してある。

●タクシーのCO2排出量は年間447万トン

 わが国は、京都議定書で、1990年を基準年として温室効果ガス排出量を2008年〜2012年の平均で6%減らさなければならない。しかし、2005年度の排出量は13億6000万トンで、これは基準年の排出量12億6000万トンより逆に7.8%増加してしまっている。今後12.8%減らさないと条約を守れないということになる。
 排出量13億6000万トンのうちCO2が12億9000万トンを占める。このうち運輸部門が排出したのは2億5700万トン、タクシーは447万トンである。タクシーの排出量はCO2全体の0.3%、運輸部門の中でも1.7%に過ぎず、その比重は大きくない。また、年々走行距離が減っていることから排出量は1990年度と比べて10.0%減っており、これだけをみれば、削減目標を達成しているともいえる。(部門別排出量の詳細
 しかし問題なのは、タクシーが排出するCO2のうち、かなりの部分は、なんらの有益な効果を伴わない、まったくのムダなCO2であるということである。
 タクシー事業においては、2002年の規制緩和以降、輸送人員は年間1億人以上も減っているにもかかわらず、2万台近くも車両が増加している。そのため供給過剰状態となり、実車率が大幅に低下している。多すぎるタクシーは、乗客を求めて空車走行を重ね、長時間の客待ちでアイドリングをつづけることになる。一定度の空車は乗客の乗り易さのためにも必要だが、適正実車率を超えたタクシーから排出されるCO2は、輸送にも利便にも貢献しない、まったくのムダな排出である。

●ムダな走行は21.3億km、5万6500台

 タクシーの走行距離のうちどのくらいがムダな走行といえるのか、以下の方法で推計した。
 推計は、都道府県別のデータがそろう法人タクシーについて行った。したがって、2005年度末現在の全タクシー台数27万3000台(営業用乗用車)から個人タクシー、ハイヤー、患者輸送車等を除いた法人タクシー22万2000台(全車比81.1%)を基準に計算しており、出てきた数値はそれ自体控えめな数値ということができる。
 2005年度の法人タクシーの総実車キロは52億8000万kmである。これを有効な需要とみることができる。これに対して総走行キロは127億km、実車率は41.6%、実働率は80.6%であった。
 需要を満たすのに足りる適正走行キロは、適正実車率を50%とした場合、

適正走行キロ 実績総実車キロ ÷ 適正実車率
52.8億km ÷ 50.0%
106億km
余剰走行キロ 127 106
21.3億km

 また、適正な実車率、実働率で、需要を満たすのに足りる適正車両数は、次のように推計できる(注2)

適正車両数 実在車両数×( 実績実車率
適正実車率
)×( 実績実働率
適正実働率

 適正な実車率を50.0%、実働率を90.0%とし、実際の数値を入れて計算すると、

適正車両数 222000×( 41.6%
50.0%
)×( 80.6%
90.0%
  165000台
余剰車両数 222000−165000
  56500台

 結局、タクシーでは、法人タクシーだけでも、年間21億3000万kmもムダに走り、5万6500台は余分な車両だということになる。

●ムダな走行を減らすことで削減されるCO2は62.4万トン

 タクシーが1km走るごとに排出するCO2は、2005年度の総排出量447万トン÷タクシー総走行キロ153億km(全車)で、平均293gと計算できる(注3)
 ムダな走行キロは21億3000万kmなので、排出されているCO2は62万4000トン。すなわち、ムダなタクシーを減らし、適正な実車率で運行できれば、CO2を62万4000トン削減することができるということになる。
 なお、適正実車率を51%、52%とした場合はそれぞれ次のようになる。

適正実車率 51% 52%
余剰台数 5.97万台 6.28万台
余剰走行キロ 23.4億km 25.4億km
削減CO2 68.5万トン 74.3万トン

 (都道府県別の削減量はこちらの別表を参照)

●ムダなタクシーが出すCO2は18.3万世帯分、171万人の努力を水の泡にする量

 タクシーで削減可能な62万4000トンのCO2は、2リットル入りペットボトル1700億本分に相当し、 日本の家庭から出る1世帯当たり平均の年間CO2排出量3410kgの18万3000世帯分に当たる。
 また、環境省が国民に協力を求めている「1人1日1kg CO2削減キャンペーン」と比較すると171万人分(365kg×171万人=62.4万トン)の年間削減量に匹敵する。
 いいかえれば、ムダなタクシーが排出するCO2によって、せっかく削減に協力した171万人分の努力が水の泡になっているということである。


自 交 総 連