5 短期雇用者の一方的な雇止めはできません

 【問い】1年契約の定時制乗務員として働いていますが、会社から次回の契約更新はしないと言われました。働き続けるのはあきらめなければならないでしょうか?

 【答え】短期雇用であっても、一方的な雇止めはできません。

 定時制・嘱託などの不安定雇用労働者が増えています。多くの場合1年以内の短期雇用であり、契約の更新、雇用の継続が重要な関心事です。短期雇用であっても使用者は一方的に契約打ち切り(雇い止め)ができるわけではありません。
 もともと短期雇用というのは、建設工事などで工事が終われば仕事もなくなるような場合に限定された雇用形態で、継続的に事業が行われるタクシーや自教では短期雇用にする理由がありません。
 運輸規則でも乗務員は「常時選任」しておく必要があるとされており、全乗連の「定時制乗務員の雇用管理に当たって留意すべき事項について」でも「定時制乗務員であっても期間の定めのない労働契約が望ましい」とされています。
 更新を重ねていくことが予想される場合には、最初から「期間の定めのない契約」(普通の正社員と同じ)にしておくべきです。
 それでも実際には1年契約、6か月契約などが多くみられます。この契約期間が満了した場合に、使用者は自由に更新拒否・雇止めができるかということですが、これについては各種の判例があって、決して使用者の自由になるものではありません。
 自交総連でも山口地連川棚温泉労組が別記の判決をかちとっています。

 更新拒否を無効とした判例

 本件契約は特段の事情がない限り更新されることが原則であって、使用者が債権者らとの雇用契約を消滅させるためには被用者において更新を欲しないことが明らかである場合を除いて、期間満了の際に更新を拒絶する旨意思表示をなすことを必要とし、しかもその際全く恣意的な更新拒絶が許されている訳ではなく、そこには自ら公序良俗、信義則、権利濫用法則等のいわゆる一般条項による制約が存するものと解すべきである。
(85.9.27 山口地裁昭和60年ヨ第62号地位保全等仮処分事件)

 更新をくり返している場合 

 まず、更新が繰り返されている場合には、その過程で、期間の定めのない契約に転化もしくは実質的に異ならないものと解釈される判例が確定しています。
 その場合は「雇止め」ではなく「解雇」となりますから、解雇が、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当として是認することができない場合には、解雇権の濫用として無効となります。

 初回の更新時の場合 

 初回の契約期間満了時でも、他の労働者は当然に更新を重ねている実績があるなど契約更新についての労働者の期待が合理的なものと認められる場合には、解雇に準じて扱われることになります。

 不当労働行為の場合 

 労働組合に入ったことや組合活動をしていることを嫌って更新を拒否された場合は、労組法違反の不当労働行為ですから当然無効です。使用者の方もあからさまに組合に入ったことを理由にはせず、表向き別の口実を設けるのが通例ですが、表面的な理由ではなく実質的な内容で判断されます。
 また、社会保険に入れたくない、有休の権利の発生を抑えたいなどの、専ら法律を脱法する目的で短期雇用としている場合は、契約が元から無効で契約書類の文面にかかわらず期間の定めのない契約とみなされます。




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