自交労働者No.688、2007年4月15日

『ノースライドの自交総連』の威力を発揮

労働条件改善実施せよ

国交省が運賃改定で通達


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3・6中央行動が国交省に通達を出させる大きな力となった
 国土交通省は3月28日、運転者の労働条件改善が確実に実施されることを前提とした査定方式を定めた通達を出し、事業者にも労働条件改善を指示する通達を出すことを明らかにしました。

 「一般タクシー事業における今般の運賃改定の審査等の取扱いについて」と題する通達は、今回の運賃改定にあたって、(1)現状の歩合率を維持し、労働条件改善をすることを前提とした査定方式をとること、(2)運賃改定時に事業者に労働条件改善措置をとることを指示する通達を出すこと――としています。

長年の運動でかちとった大きな成果

 運賃改定時の労働条件改善の指示などは、当然のこととして自交総連が要求していたものですが、昨年10月の国交省交渉では、規制緩和後の運賃改定であることなどを理由として、指導はしない、通達も出さないとの態度でした。このため自交総連は強力に運動をすすめ、3月6日には交運共闘と合わせ1500人で請願(8812筆を提出)を実施、同日の交渉では、前回より前向きの回答を引き出していました。こうした運動の成果で、通達には、運賃改定時に事業者に労働条件改善の指示をすることが明記されています。

 また、新しい査定方式は、自交総連が30年前から主張してきた運賃改定時のノースライドを、実質的に査定に取り入れたともいえるもので、ノースライドで増えるべき賃金分も見込んで運賃値上げ率を決めるという内容です(解説参照)。

 ノースライドの正当性が改めて証明されたものといえ、この通達の内容を活用して、経営側と強力に交渉して確実な労働条件改善をかちとっていくことが重要となります。

賃金アップ分を保障する査定方式を採用

【解説】表のモデルを使って今回の通達を解説します。

従来方式だと改定率はわずか

 従来の方式は、実績に物価上昇率などを掛けて原価を査定していました。この方式では、もともと低い運転者賃金が土台となって査定される上、運収が伸びていない現状では賃金も上昇しない査定になってしまいます。

 表上の従来方式の欄にみられるように、物件費(諸経費)が10%伸びたとしても、原価全体としては4%の伸びに留まり、赤字を埋める分だけ改定するというルールにもとづき運賃改定率は4%にしかなりません。これでは労働条件改善の原資も出ないということになりかねません。

ノースラ分をあらかじめ査定

 新方式では、人件費がノースライドで伸びる分をあらかじめ見込み、それを保障できるだけの改定率とするために、表下のような計算により【人件費調整額】を割り出し、この分を従来の人件費の査定に上乗せして査定(60+6=66)することにしています。

 この方式だと、改定率は10%となり、ノースライドで人件費が10%アップする原資も確保できます。

経営者の言訳は今回は通用しません

 過去の運賃改定では、経営側がノースライドとする原資がないなどといってスライド賃下げ(足切り引き上げや賃率引き下げ)をする例がありましたが、そのような言訳は、今回はまったく通用しません。

 さらに通達は「実質的な労働者負担の軽減や手当て類の創設」なども公表せよと事業者にうながしていますから、ノースライド+アルファーも当然だということになります。

 春闘では強力な交渉で事前にノースライドを約束させましょう。

運賃改定審査の新方式のモデル

実 績 従来方式 新方式
査 定 改 定 査 定 改 定
収  入 100 100 104 100 110
運賃原価 100 104 104 110 110
 人件費 60 60 60 66 66
 物件費 40 44 44 44 44
収 支 差 0 -4 0 -10 0
(改定率) 4% 10%
*上の表は、以下の仮定による試算。
実績年度の収入と運賃原価:100
歩合率(賃率):60%
運収の伸び:0%(歩合給なので人件費の伸びも0%)
運賃原価のうち物件費の伸び:10%

通達の計算式による「人件費調整額」の計算
【単純不足額】運賃原価−収入 4
【実績年度歩合率】60%と仮定 60%
【所要増収額】単純不足額÷(1−実績年度歩合率) 10
【人件費調整額】所要増収額×実績年度歩合率 6
*人件費調整額というのは説明のために仮に名づけた言葉で、通達にはない。



07春闘

決着にむけ闘い本番

要求提出率は65・8%


 「有利な条件生かし、かちとれ! 賃上げ、組織の拡大 07春闘」をスローガンに掲げた07春闘は、各地方の単組・支部で決着に向けた闘いが本番となっています。

 4月6日現在、要求提出は226組合・支部(65・8%)と、なっています。そのうち回答を引き出したのは8職場で、妥結・了解は6職場となっています。

 回答内容は、ハイタクでは、福島・県自交労組で2社による集団交渉で、基本給(10万7500円の者=1500円上積み、10万9000円の者=1000円上積み、11万円以上12万円未満の者=定期昇給として500円上積み、12万円以上12万5000円未満の者=一律500円上積み)の底上げを実現。東京の目黒自交は、福利厚生改善、定時制賃率56%→57%を獲得、神奈川・山王支部では、運賃改定時は上限運賃での申請、賃金のノースライドなどをかちとり、成果をあげています。



会社更生手続きの開始決定

鹿児島・大和交通労組

新たな一歩踏み出す


 【鹿児島】大和交通労働組合の組合員が労働債権をもって会社再建をはかる会社更生手続き開始の申し立てに対し、鹿児島地裁民事第3部より3月27日、開始「決定」が下されました。04年9月3日の申し立てから実に2年半ぶりのことです。

 今回の決定を受けて、今後は管財人(松下弁護士)のもと、更生計画案づくりにむけた本格的な再建闘争に突入することになります。

 労組結成から15年半、自主管理闘争から14年が経過し、試行錯誤の運営からまた新たな一歩を踏み出しますが、土地問題などこれから解決しなければならない点など多々あり、未来にむけた希望とともに、不安も交錯しています。

 これまで予納金・出資金など数々の問題を解決できたのも全国の仲間の支援のおかげであると再認識するところです。

 今回の決定をうけて当該の日高委員長は「失敗を恐れたらなにもできない。ここまできたら前進あるのみだ」とコメントしています。



タクシー死亡事故は47件

警察庁

全事故件数は減少


 06年のタクシー死亡事故は47件と前年より3件減少――06年の交通事故統計を警察庁がまとめました。交通事故死者数が昭和30年以来51年ぶりに6000人台前半(6352人)となるなか、タクシーの死亡事故も前年より3件減の47件となり、全事故件数も1141件減と前年を下回りました。

 死亡事故は東京で8件と前年の12件に対し4件の減少。静岡では、昨年は4件であったのが、0件となりました。

 また、全事故は、全体で減少してはいるものの、宮城では昨年より49件増の445件、福島は32件増の137件と増加しているところもあります。

 タクシーの交通事故は06年は減少したものの、91年の1万6054件と比べるとまだまだ高止まりな傾向となっています。

タクシー交通事故の推移
グラフ
(注)2001年から統計の車種区分が変わったため、
   2001年は新旧両方の数値を示してある。

表



京都地連

春闘勝利・組織拡大を

府北部、滋賀で宣伝実施


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運転者と対話留守宣伝行動参加者=3月22日、京都・綾部駅頭
 【京都】春闘勝利、組織拡大を目的とした宣伝として、3月22日に北部宣伝、3月29日に滋賀宣伝を行い、自交総連の存在と役割、とりくみを訴える宣伝行動となりました。

 3月22日の北部宣伝では、7か所の駅頭で行動し、JR東舞鶴駅前では、タクシー運転免許法実現や運転者登録制度へのとりくみ、運賃改定で賃金労働条件の改善の流れを作っていこうというとりくみを紹介し訴えました。

 どの駅のタクシー運転手からも、給料の低さと、タクシーの将来を不安視する声が聞かれ、配布したビラが熱心に読まれました。

 3月29日の滋賀宣伝では、10時のJR西大津駅前を皮切りに6か所で宣伝を行い、大津駅では、「今日みたいなイベントや競艇があるときは確かに流れるけど、ないときは2時間くらい待つこともある」と状況説明。瀬田駅では、「タクシーは年金もらいながらでなければできない産業になってしまった、ひどいもんだ」という嘆きが聞かれました。



「世話やきなど日常活動大事」

大阪地連

第20回自交労働学校に60人


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春闘の重点課題を講義する小林書記次長=3月21日、神戸市内
 【大阪】大阪地連は3月21〜22日、「第20回自交労働学校」を神戸市北区内でひらき、労働法制や春闘をめぐる情勢を学んだほか、模擬団体交渉にもとりくみ、07春闘勝利に向けて60人がレベルアップを図りました。

 第1講義では、大阪労連の服部副議長が「財界が狙う労働者の個人支配と労働法制」と題して、熱弁をふるいました。

 第2講義では自交総連本部の小林書記次長が、07春闘の重点課題として「賃金・労働条件の改善の道すじをつける」「交政審小委員会報告の内容を実現させる」「組織の強化・拡大」「政治革新」の4点をあげ、「運動の中で貫くことが大事」と述べました。

 また、組織拡大については、「数値目標を持ち世話やきなどの日常活動に加えて、政策論争の優位性が大事」とアドバイスし、最後に「運動は明るくなくちゃダメ。暗い顔しないようにともにがんばりましょう」と締めくくりました。



能登半島地震に支援要請

石川地連に救援募金を


 全労連では、3月25日に石川県能登半島でおきた地震に対する救援と復興のための募金・義援金の要請をしています。

 自交総連ではこれに合わせ、石川地連と協議の上、救援募金を呼びかけ、その支出先については、石川地連と石川県労連が協議した上で、もっとも必要なところに拠出してもらうように取り扱うこととしました。被災地の復興のためにみなさんのご協力をお願いします。

 送金先=北陸労金金沢西支店 普通1923914▽名義=自交総連石川地方連合会▽連絡先=076―267―3987

 金額は本部にも連絡してください。



自 交 総 連