自交労働者No.940、2020年6月15日

自家用有償運送の拡大法案が可決

今後もライドシェア阻止のとりくみ強める

  5月27日にひらかれた参議院本会議で、自家用有償運送の拡大・道路運送法の改悪を含む地域公共交通活性化・再生法改正が賛成多数で可決、成立しました。反対は日本共産党とれいわ新選組でした。
 自交総連は、ライドシェアへの突破口につながる法案に反対し、衆参議長に1万9702筆(6月8日現在)の署名を提出、直前にも議員に全国からファックス要請を集中するなど運動をつよめてきましたが、野党内でもライドシェアにはつながらないという楽観論があり、審議が十分深まらないまま可決に至りました。
 今後は、審議の中で明らかになった矛盾点や附帯決議で「ライドシェアは引き続き導入を認めないこと」と明記された点を生かし、運用面での規制強化を求め、ライドシェア阻止のとりくみをいっそう強めていきます。
 本会議に先立ち26日には参議院国土交通委員会で審議が行われました。討論後、日本共産党が、法案から自家用有償運送拡大の部分を削除する修正案を提案しましたが、共産党のみの賛成で否決。次いで本案が共産党の反対、その他の党の賛成多数で可決されました。
 附帯決議は、維新のみが反対、共産党を含む賛成多数で採択されました(附帯決議の内容は以下のとおり、一部略)。


持続可能な運送サービスの提供の確保に資する取組を推進
するための地域公共交通の活性化及び再生に関する法律等
の一部を改正する法律案に対する附帯決議

                   2020年5月26日 参議院国土交通委員会

   交通事業者、物流事業者等が必要な輸送機能を維持できるよう、新型コロナウイルス感染症による急激な経営悪化に対する財政、税制、金融等の各種支援策を一層充実するとともに、その従業員に対して実施される雇用維持対策及び感染症予防対策等への更なる支援強化に努めること。
    国及び地方公共団体は、持続可能な地域公共交通の確保及び維持のために安定的な財源の確保を図ること。また、バス、タクシーやデマンド交通の確保及び維持等、公共交通の利用環境の改善に関する取組に対しては、これまで以上に多様かつ柔軟な対応を図りつつ、財政的な支援を図ること。
   地域公共交通の確保及び維持のために、自動車運転者等輸送の担い手である公共交通に従事する者の確保、育成及び定着に配慮するとともに、自動車運転者等の賃金及び労働時間等の労働条件の改善について幅広く検討すること。
    地域公共交通計画を適切に作成し同計画に基づく事業計画等を円滑に推進するために、外部有識者からの助言なども含めた計画作成に要する費用を始めとする財政的支援を一層充実するとともに、ガイドラインの作成、知見やノウハウの提供、人材の確保や育成といった、ソフト面での支援や助言も十分に行うこと。また、地域公共交通計画の作成に当たり、地方公共団体における組織体制の充実のための支援を強化すること。
   福祉輸送、スクールバス等の地域の輸送資源の総動員に当たっては、これらの担い手である関係者とともに高齢者、障害者等の移動弱者の声を代表する者が協議会に参画できるよう、基本方針やガイドラインで、明らかにすること。また、既存の公共交通サービスを改善する取組を推進し、リアフリーの視点に立った利便性及び快適性の向上にむけた必要な環境整備を図ること。
   MaaSを全国へ円滑に普及させる観点から、その導入によって実現される社会像を国民に分かりやすく示していくとともに、ICT等の最新技術の積極的な活用による交通ビッグデータの整備など、将来の交通社会の変革に資する環境整備を図ること。
   自家用有償旅客運送が事実上の営利事業として地域公共交通の担い手となっているタクシー事業者の経営を圧迫することにならないよう対策を講ずること。また、地域公共交通会議等における関係者の協議を経て、安全の確保、利用者の保護等に万全を期すこと。あわせて、いわゆる「ライドシェア」は引き続き導入を認めないこと。
   高齢化の進行や人口の減少に伴って交通空白が急速に拡大する過疎地域での移動手段の確保のため、より身近な地域コミュニティにおける道路運送法の許可や登録を要しない共助による運送の在り方について、ライドシェアを除外したうえで検討を深めること。
   営業区域外旅客運送を行うタクシー事業については、住民の利便性の向上に資する観点から、地域公共交通会議等において十分な協議を経て、一定のルールの下で、事業者において混乱なく、また、運用の効率化ができるよう、ガイドラインの制定や通知の発出等必要な措置を講ずること。
  十〜十二 略

賃金保障と感染予防を

全タク連が調査、ガイドライン作成

新型コロナウイルス感染症への対策

表

  全タク連は、3〜5月前半の新型コロナウイルス感染症の影響による営業収入の変化に関するサンプル調査結果を発表しました。
 これは、全国47都道府県で5社前後のサンプル調査による総営業収入の対前年同期比較を集計したものです(上表は一部地方を抜粋)。
 4月をみると東京で66・1%減、神奈川で59・6%減、大阪で57・9%減などとなっており、大幅な需要減少がわかります。
 5月前半はさらに営収減が深刻で、7〜8割の減収となった地方もあり、もっとも減収幅が大きかったのは京都の86・6%減でした。
 全国で緊急事態宣言が解除された6月以降のタクシー需要がどの程度回復するかは不透明です。今後も、特例措置が拡大された雇用調整助成金などを活用し、最低限の賃金保障を守っていくことが必要です。

感染予防に努める

  全タク連は5月14日、タクシーにおける新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン(第1版)を作成しました。  政府の対処方針を踏まえて整理したもので、事業者は従業員らの感染防止に努めることとしています。主な内容は、下のとおりです。  防護スクリーン、乗客にマスクの協力要請など、運転者の命を守るとともに、タクシーが安心・安全な乗り物であることをアピールすることが重要です。


全タク連のタクシー感染予防ガイドライン(抜粋)

 ◎健康管理
 ●従業員に対して、可能な限り朝夕2回の体温測定を行った上で、その結果や症状の有無を報告させ、発熱やせき等の症状がある者は自宅待機とする。特に、息苦しさ、だるさ、味覚・嗅覚障害といった体調の変化が無いか重点的に確認する。

 ◎車両・設備・器具
 ●事業用自動車内の座席、手すり、防護スクリーン、タブレットなど、乗務員や不特定多数の利用者が頻繁に触れる箇所については、こまめに消毒を行う。座席に掛ける布については、定期的に洗濯する。
 ●運転席と後部座席の間に防護スクリーンを設置すること等により、乗客と乗務員の飛沫感染を防止するよう努める。

 ◎運行中
 ●乗務員は、運行中はマスクの着用を徹底する。乗客の意向を確認した上で、エアコンによる外気導入や窓開け等の車内換気を行うとともに、車内換気を行っていることを表示する等により、乗客が安心して利用することができるように配慮する。
 ●乗客の降車後に、窓を開けて換気する等の車内換気に努める。運賃の受け渡し等において、マスクや手袋を着用するとともに、乗客との直接接触を減らすよう努め、乗客降車後は車内の消毒を行う。

 ◎従業員に対する協力のお願い
 ●発熱や味覚障害といった新型コロナウイルス感染症にみられる症状以外の症状も含め、体調に思わしくない点がある場合、濃厚接触の可能性がある場合、同居家族で感染した場合、各種休暇制度や在宅勤務の利用を推奨する。

 ◎利用者に対する協力のお願い
 ●定員上、後部座席に着席可能である場合には、利用者に対して可能な限り後部座席に乗車するよう理解と協力を求める。乗車に際しては、利用者のマスク着用について理解と協力を求める。

解雇か自主退職か迫られた

コロナで解雇は不当

東北地連センバ流通労組、仙台地裁に仮処分申し立て

  【東北】新型コロナウイルスの感染拡大に伴う業績不振を理由に、仙台のセンバ流通の千葉オーナーは4月30日、組合との団交の席上で、自交総連組合員全員の解雇を突然通知してきました。
 組合は5月12日、解雇要件を満たさない一方的解雇は無効として会社に従業員であることの地位保全と賃金の支払いを求める仮処分を仙台地裁に申し立て、反撃を開始しました。
 組合では同日、マスコミ各社を集めて記者会見をひらき、「会社をスリム化し、コロナウイルスに対応していく」との会社姿勢に対し、雇用調整助成金制度の活用など解雇回避の経営努力もなく、経営状況に関する説明もない一方的解雇は無効と断じました。センバ流通では4月以降、組合員を含め30人が解雇されたとみられます。
 記者会見に臨んだ組合員は、「それぞれの生活があるなかで、事情の説明もされずに紙切れ1枚で解雇され、納得できない」と訴えていました。
 東北地連では、「解雇か自主退職を選ぶよう迫られた」「国民健康保険への切り替えを求められた」等、労働者へのしわ寄せでコロナ禍を乗り切ろうとする事業者のもとで働く人からの相談が増えています。会社側の一方的な人員削減や労働条件切り下げの動きに対し石垣書記長は、「この状況が続けば解雇は増え続ける。センバ労組の申し立てを契機に『諦めなくてよい』という声をあげる人が増えることを期待する」と述べ、自交総連への相談窓口の活用を訴えました。

労働局通じて適切に指導

参議院国土交通委員会、武田参院議員(共) 不当解雇を追及

質問する武田良介参院議員=5月14日、参議院国土交通委員会
質問する武田良介参院議員=5月14日、参議院国土交通委員会

  5月14日の参議院国土交通委員会で、日本共産党の武田良介参院議員が新型コロナウイルスのタクシー業界への影響を質問、解雇問題に国交省・厚労省がしっかり対応するべきだと追及、赤羽国交相は、倒産などが出ていることは看過できないとし、仙台・センバ流通の不当解雇について、国交省一見自動車局長は、局・支局から連絡を取り状況を確認する、厚労省自見政務官は、問題のある事業者を把握した場合は労働局を通じて適切に指導すると答えました。

質問の要旨

  ○武田良介参院議員(日本共産党) (新型コロナウイルスの影響を受けているタクシー事業者への影響の調査について)不十分ではないか。負担になるというが、もっと実態をつかんでくれと思っているのではないか。4月30日には、宮城県仙台市のセンバ流通で従業員の約半数に解雇通知が出された。その他にも、東京・龍生自動車、神奈川・松田合同自動車、兵庫・大成交通など聞いている。こういう解雇がたくさん出ているわけだから、不十分な実態調査ではなく、国交省として直接、実態を把握するべきではないか。
 ○赤羽一嘉国土交通大臣 ハイタク業界と調査だけでやり取りしているわけではない。私のところにも業界代表が来て、会って実情を聞いている。倒産などの事例が出ていることは看過できない。我々もフォローするが、雇用の問題は、一義的には厚労省の所管だ。
 ○武田議員 現実に解雇が起こっているのを放置したら、業界全体にも大変な打撃になるのではないか。厚労省も雇用調整助成金の特例措置を拡充してきてはいるが、それでも現場では、まだ不十分、使えないという声がある。使われなければ意味がない。宮城のセンバ流通の件では、この事業者は、労働者が雇調金を使って休業し雇用を守ってくれと要請しているのに、聞く耳を持たず解雇している。国交省は、そういう実態をご存じか。
 ○一見自動車局長 報道を通じて解雇されている状況は承知している。運輸局、支局から事業者に連絡を取り、状況を確認している。個々の雇用問題は厚労省の所管なので、厚労省につないで対応してもらう。
 ○武田議員 センバ流通では、4月30日に突然解雇通知を出してきた。労働組合が、雇調金を活用して危機を乗り切ることを提案して交渉してきた、そのさなかに突然解雇通知を出してきた。こういう悪質な解雇を許したら、今後同様の解雇が続くおそれもある。直ちに指導すべきだと思うが、厚労省どうか。
 ○自見はなこ厚生労働政務官 個別の問題には答弁を差し控えるが、解雇は、客観的に合理性を欠き、社会通念上相当と認められない場合は無効となる。法令に照らして問題のある事業者を把握した場合は労働局を通じて適切に指導していく。

雇用調整助成金の特例措置の拡大

1日上限1万5000円へ教育訓練加算で助成額アップ

  雇用調整助成金は、経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業者が、雇用の維持を図るための休業手当等に要した費用を助成する制度です。
 計画休業の際、助成額の上限は1人1日8330円ですが、6月中に成立予定の第2次補正予算により1万5000円へ引き上げられる見込みです。
 雇用調整助成金の上限が引き上げられた場合は、さかのぼって適用になりますので、休業手当の支給率を引き上げ、決め直して支給させることができます。
 また、助成額を増やすためには、教育訓練加算を利用する方法があります。休業中に教育訓練を行った場合は1日2400円(中小企業の場合、大企業は1800円)の加算額が支払われます。
 この教育訓練は、自宅での学習も可能なので、教育訓練計画を休業計画の中に組み入れて、助成額のアップを図ってください。

表

新加盟のなかま 

(850)福岡・昭和市丸交通分会
有利に交渉進めるため加入

  福岡の昭和市丸交通有限会社で働く仲間が5月11日、福自交労組に加入し、昭和市丸交通分会(辻浩分会長、9人)を結成しました。
 コロナウイルス関連の雇用調整助成金について有利に交渉を進めるため、以前働いていた会社で自交総連の組合員だった人から地連へ相談が入りました。
 現在、団体交渉を継続中です。


(851)福岡・庄内観光タクシー分会
個人加盟から組織化へ

  福岡の有限会社Shonai観光で働く仲間が5月15日、福自交労組に加入し、庄内観光タクシー分会(江口弘分会長、4人)を結成しました。
 元々個人加盟していた江口氏からの連絡で地連がオルグに入り組織化に至りました。コロナ関連の休業補償については、社長が入院中ですが、組合員が団結し、交渉を進めています。


(852)福岡・古賀・宗像自動車学校分会
再びの組織化

  福岡の有限会社古賀自動車学校で働く仲間が5月25日、福自交労組に加入し、古賀・宗像自動車学校分会(古賀康行分会長、7人)を結成しました。
 会社には以前自交総連の組合があり、今回コロナ関連で相談が入り再び組織化ができました。
 団交継続中で、現在の加入は宗像校のみですが、古賀校の組織化も進む見通しです。