自交労働者No.999、2025年9月15日

核兵器ない平和な世界願う

「使うな、持つな、作るな」

平和運動を次世代につなげよう

 2025年は被爆80年の節目にあたります。
 これからも自交総連は、平和運動として、政府の大軍拡路線に反対し、日本が核兵器禁止条約を批准するよう求めていきます。

2025年原水爆禁止世界大会・長崎大会=8月7日、長崎・長崎ブリックホール・大ホール
2025年原水爆禁止世界大会・長崎大会=8月7日、長崎・長崎ブリックホール・大ホール

被爆80年を迎えて

 1945(昭和20)年8月6日8時15分、人類史上始めて原子爆弾(広島・ウラン型)が投下され、その僅か3日後の11時2分にも(長崎・プルトニウム型)キノコ雲が。両市とも何の罪もない市民の命が「3秒」で失われ、街は壊滅した。
 辛うじて生き残った人は心と体に深い傷を負い、今なお少なくない人々が放射線の後障害に苦しんでいる。
 この人道上許されない行為を「戦争を終わらせるために必要だった」と、アメリカは現在も一貫して主張している。しかし歴史をみれば明らかであるが、世界大戦後の覇権争いで、アメリカが優位に付くためだったとしか言いようがない。これは、終戦後、日本を統治したGHQが原爆被害の報道を許さなかったことからも伺える。
 現在、ロシアのウクライナ侵攻やイスラエルのパレスチナ・ガザ攻撃など「力による現状変更」に対し、機能しない国連を目の当たりにすると大国の覇権争いが続いているのだと実感させられ、言いようのない黒い影に覆い被されているように感じる。  しかし、国からも放置され、いわれのない「差別」を受け続けた被爆者たちが「声」を上げ立ち上がり、活動を続けてきた日本原水爆被害者団体協議会(被団協)が昨年ノーベル平和賞を受賞したことは、一筋の光明と言える。
 平和でなければ成り立たない自交産業で働く自交労働者としてこれまでの運動に確信を持ち、世界中の心ある人々と結び付き「ノーモア ヒロシマ・ノーモア ナガサキ・ノーモア ヒバクシャ」そして、「ノーモア ウォー」の「声」を上げ続けて、草の根の平和運動を次世代につなげていこう。(執筆=庭和田裕之中央執行委員長)

原水禁大会に参加

 2025年原水爆禁止世界大会が開催されました。今年は、7月26日に福島大会、8月4〜6日に広島大会、8月7〜9日に長崎大会が行われました。
 参加者の感想を紹介します(一部省略)。

平和の尊さを改めて考える

 参加を通じて改めて核がもたらす有害性や戦争の悲惨さを身に染みて感じることができました。
 長崎市民体育館で被爆者・田中照巳さんの演説を拝聴した際、被爆者としての深い苦しみ、核兵器の非人道性を告発する力強い言葉に胸を打たれました。「使うな、持つな、作るな」という明快な訴えは、戦争の悲惨さを知らない世代にも強く響き、平和の尊さを改めて考えさせられました。この経験を通じ、戦争がいかに大きな悲しみを生み、いまなお生存している被爆者を苦しめているかを心に刻み、決して忘れないようにしたいと思います。そして、これからもこうした反対運動に積極的に参加し、世界で起こっている戦争を少しでも減らしていけるよう協力していきたいと考えております。(神月崇さん)

被爆体験談に涙とまらない

 私が参加した分科会は、『核兵器禁止条約の参加する日本を・非核日本キャンペーン』でした。  唯一の被爆国なのに未だに核兵器禁止条約に参加していない、一発の原子爆弾によってたくさんの尊い命が奪われたというのに何故参加しないのか、被爆して後遺症に苦しんでいるのに被爆者と認定されない方のお話を聞いて、涙がとまりませんでした。  原爆資料館を見学しましたが生々しい写真や映像、血液のついたぼろぼろの服などが展示してあり辛い気持ちになりました。  賑やかな日常が一瞬で何もなくなってしまう恐ろしい兵器。  核に頼らない戦争や紛争のない平和な世界を願い次の参加者へ繋げる事ができればと思います。(鍋田育信さん)

原爆資料館で悲惨さを確認

 原水禁世界大会は10年以上前に広島に参加しましたが、長崎は初めてになります。
 前回の記憶が薄れてきましたが、今回参加することになり、結団式の中で被爆者の体験談を見て記憶がもどってきました。
 長崎では初日と最終日の集会や2日目の分科会で被爆者の体験談を聞きました。2日目の分科会終了後の空いた時間で原爆資料館を見学し、当時の悲惨な状況を改めて確認することができました。
 日本は広島・長崎で被爆をうけた被爆国にもかかわらず、核兵器禁止条約に署名も批准もしていません。二度とこのようなことが起きないよう運動を進めていかなくてはいけないと思いました。(橋昭裕さん)

国交省・厚労省・警察庁と交渉

 自交総連は8月21日、衆議院第1議員会館会議室で国交省・厚労省・警察庁と交渉を行いました。日本共産党の堀川あきこ衆議院議員の秘書も同席しました。

運賃改定の不当手法に対応せよ

国交省 「労使間の問題」と終始返答

 国交省=物流・自動車局旅客課鈴木課長補佐他3人
 組合側=庭和田委員長他6人
 議員側=栫秘書

【ライドシェア阻止、規制緩和問題】
組合側 省としてタクシー事業者以外の者を参入可能とする「ライドシェア法案」には反対すること。
国交省 法案が国会でどうなっていくか審議状況を注視したい。
組合側 『日本版ライドシェア』の運用解除の指標を策定し、供給不足が改善されている地域は早急に解除すること。
国交省 制度創設以降、配車アプリのマッチング率は改善がすすんでいる。その一方で、自治体や利用者からは「まだ移動の足が足りない」という声をもらっている。今後の運用解除については、引き続きモニタリングを行い、事業者側の意見を踏まえて判断していく。
組合側 運用解除の指標について明確なものがないまま、『日本版ライドシェア』が実施されるのは我々運転者として不安がある。
国交省 この制度が始まって1年半。一律にどうなったら止めていいのかという基準はもう少し様子を見て考えていく必要がある。
組合側 過疎地域や人口30万人以上の都市を含まない営業区域で、移動の足確保のためにも、個人タクシーの新規許可を認めること。
国交省 2023年度の通達改正で、人口が30万人以上の都市を含まない営業区域では、地域の実情を勘案して地方運輸局長等が必要と認めて指定した地域においては個人タクシーの営業を認めている。

【タクシーの運賃改定問題】
組合側 省として運賃改定前後の賃金切下げなど事業者による不当な手法を認めないこと。また、改定趣旨を逸脱した賃率引き下げを行った事業者は公表のうえ、厳しく指導するとともに、運転者負担等を解消させること。
国交省 一般論として運転者の賃金等の労働条件は労使間で決定されるべきもの。しかし、運転者の処遇改善を促すために、@運賃改定の効果が事業者によって適切に反映されていない事実を確認した際は、当該事業者に対して指導する、A各種事業者団体に対し改定から半年後に、労働条件の改善状況について公表するよう指示する──等のとりくみを行っている。また、改定趣旨を逸脱した賃金引き下げを行う事業者についても、フォローアップ調査によって事実が認められる場合には、地方運輸局を通じて必要な指導を実行する。
組合側 国交省は「賃金制度については労使間の問題」と言うが、何が起きているか認識しているのか。例えば、運賃改定は総括原価方式に基づいて適正な理由があり申請されるが、営業収入からアプリ配車の手数料などを始めから引いて賃金計算することで、経費の二重取りが水面下で行われている。東京の飛鳥交通の一件などは全国に知れ渡っている。
 また、就業規則を変更し、賃金自体を変えていく方法もある。これでは運賃改定を何回しても運転者の手元に増収分は残らない。省としてどのように考えて、手立てするつもりなのか。
国交省 運賃改定の増収分がしっかり運転者に還元されているのか、下がったとして見合ったものになっているのか、しっかり注視していかなければならないと思っている。今後、フォローアップ調査がどうなるのかということは考えていきたい。
組合側 同じタクシー運転者でも、東北・九州は東京の半分ほどの賃金となっており、運転者がどんどん辞めていっている。会社が倒産し、交通手段がなくなった利用者はたいへん不便な思いをしている。このような交通行政を国交省が容認しているということだ。本来、東京の倍の運賃でなければ地方のタクシー事業は成立せず、賃金も改善されない。運賃改定の迅速化を真剣に考えてもらいたい。


しっかり労働者の賃金を守って

厚労省 「特例の検討始めていない」

 厚労省=労働基準局労働条件政策課大田法規係長他6人
 組合側=庭和田委員長他6人
 議員側=栫秘書

厚労省の係官へ要請書を手渡す庭和田委員長(写真左)=8月21日、東京・衆議院第1議員会館会議室
厚労省の係官へ要請書を手渡す庭和田委員長(写真左)=8月21日、東京・衆議院第1議員会館会議室
組合側 手待ち時間を労働時間から除外する脱法手法をつづけるタクシー事業者を指導し、是正させること。
厚労省 一般論として、使用者の指示があった場合には、労働者は即時に業務に従事することを求められており、労働基準関係法令違反等が認められた場合には、その是正を指導している。
組合側 例えばデジタコが5分止まったら勝手に休憩時間になっている、という事例がある。お客さんを駅前で待っていたら、5分経つのはザラにある話。この場合は事業者の指揮命令から外れてはおらず、労働時間とされるべきものを、休憩時間に組み込んでいる。これは脱法行為になるか、ならないのかどちらなのか。
厚労省 すべての場合について脱法行為と言い切るのは難しい。機械の記録だけを鵜呑みにして一律にみなすのではなく、実態として休憩時間と言える時間だったのか否かを判断する。
組合側 全タク連から2024年に「タクシー運転者の分割休息期間に関する要望書」が厚労省に提出された。タクシーの安全性を低下させることから、この特例を認めないこと。
厚労省 30数年ぶりに改定された改善基準告示を運送事業者が遵守することが第一であり、タクシーに分割休息を入れるといった話はまだ時期尚早だと思っている。まずは労働条件の改善に努めてもらいたいと考えている。要望が出ていること自体は事実だが、基本的には検討を始めるといった話にはなっていない。
組合側 分割休息期間は実労働の部分だけ賃金を払うことになるので必ず賃金が下がる仕組みだ。地方の事業者が「何とか最低賃金を払わずに済む方法はないか」とこの特例を要望していることを我々は知っている。これを認めたら、たちまち運転者がいなくなる。労働時間の問題は結局賃金につながる。労働条件や賃金制度を司る行政として、厚労省には労働者をしっかり守ってもらいたい。

白タク無法地帯の野放しはNO

警察庁 「空港の取り締まり強化する」

 警察庁=交通局運転免許課佐々木課長補佐他7人
 組合側=庭和田委員長他6人
 議員側=栫秘書

組合側 第二種運転免許に係る教習カリキュラムを短縮するなどの簡略化は、タクシーの安全性や運転者の地位の低下につながることから見直すこと。
警察庁 受験資格の見直しにあたっては、交通の安全に支障のないようにするために、運転免許取得の前後にわたって安全対策を講ずることとしている。受験資格特例教習や若年運転者講習といった制度を適切に運用するとともに、道路運送の安全確認を所管する国交省とも連携し、事故防止に向けたとりくみをすすめていきたい。
組合側 インバウンド需要の増大により、空港を中心に白タク行為が横行している。羽田空港では、障がい者用スペースを塞ぐ形で車両が停車していても、空港警察は排除しない実態もあり、取り締まりを強化するとともに考え方と対策を示すこと。
警察庁 白タクの取り締まりは強化しており、白タクを行ったドライバーのみならず、組織的な背景についても実態解明をすすめていく。羽田空港ターミナルにおける違法駐車については、国交省や東京国際空港ターミナル株式会社と連携して、違法駐車防止の警備員を配置し、警告看板の設置などの対策をすすめている。ターミナル周辺を重点地域に指定して取り締まりを強化している
組合側 駐車問題や白タク、運用が守られない都市型ハイヤーなど、羽田空港が無法地帯になりかけていると我々は思っている。今後も情報提供をしていくので、野放しにしないこと。

詳細

改定日の先送りが続出

地域間格差がさらに拡がる

2025年度地域別最低賃金

 2025年度の地域別最低賃金の答申が出そろいました。(
 最高額は、東京都の1226円で、後に神奈川県の1225円、大阪府の1177円と続きます。
 最低額は、高知・宮崎・沖縄県の1023円ですが、目安を大幅に上回る71円の引き上げです。多くの地域で厚労省が示す目安超えの改定額へ引き上げる動きがみられます。
 最高額と最低額で203円の差があり、地域間格差は相変わらず解消されていません。
 一方で、改定日の先送りが続出する異例の事態になっています。
 最低賃金法では、時期は定められていませんが、例年であれば10月中に発効するのが一般的です。
 しかし表にあるように、27府県がそれ以降に時期を遅らせています。例えば、秋田県では来年3月末の発効となっており、前年度の最賃額のまま半年も据え置かれることになります。
 ここまで遅れている理由は、答申が過去最高の引き上げ幅となったためです。賃金体系の見直しなど準備期間が必要とした使用者側の主張を汲む形で、先送りが決定しました。
 これだけ地域ごとで開始時期にずれがあると、賃金の地域間格差がさらに拡がることになります。

最賃下回っていないか確認

 タクシー業界は、今でも最賃違反が多い状態にあります。過去最高の引き上げとなれば違反がさらに増加することは明白です。
 月十数万円という賃金の場合、最賃法違反かどうか計算してみる必要があります。
 自分の賃金が最賃を下回っていないか、こちら(最賃と賃金の比較方法)を参考に確認しましょう。

きになる交差点

タクシー 帰宅困難者4000人助ける

万博来場者の交通問題

 第2回目で取り上げるのは、現在開催中の大阪・関西万博の交通問題です。
 地下鉄・橋がひとつずつしかつながっていない孤島で来場者を安全に輸送できるか、かねてから危惧されていましたが、案の定トラブルが発生。大混乱に陥りました。


 8月13日夜のことです。大阪メトロ中央線が停電によって夢洲・長田間の全線がストップ。万博来場の約3万8000人が帰宅困難者となる事態が起こりました。
 このとき、万博協会からの緊急要請に、タクシー事業者は全面的に協力しました。しかし万博のタクシー乗り場は狭く、待機場を含め54両しか入れません。タクシーが集結しても乗り場に入りきれず、周辺道路で混乱をきたすのではないかという懸念がありましたが、無線等で適宜連携を取り、機動力で対応。翌朝にかけて約4000人の帰宅を助けました。
 ところが、このトラブルを受けて、吉村洋文大阪府知事および万博協会は、信じがたいことを言い出しました。
 それは、今後のトラブル発生時の対応として、緊急時に駐車場を開放し、万博会場への自家用車の乗り入れを許可するというもの。
 万博協会は「大きな駐車場なので、交通の混乱は起きないと考えている」としていますが、ここぞとばかりに秩序なき『白タク』が大量に集結し、事件・事故が起こる危険があります。
 吉村知事の国への直談判で決まった『万博ライドシェア』といい、終始場当たり的なとりくみがトップダウンで強行されています。

城書記長コメント

 吉村知事の発想は短絡的です。ライドシェア解禁の一助とさせてはなりません。限定された経路への自家用車の乗り入れは、タクシー・バスの運行に支障をきたす恐れがあります。